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蜃気楼~富山湾の神秘~

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蜃気楼

蜃気楼とは

蜃気楼は、空気中で光が屈折するために5~20km離れた景色が実際とは違う形に見える現象で、上位蜃気楼(春の蜃気楼)と下位蜃気楼(冬の蜃気楼)の2種類があります。

春の蜃気楼(4月から5月頃に多い)は、実際の風景の上側に、伸びたり反転した虚像が出現します。富山湾の海面上に冷たい空気が層をつくり、その上の暖かい空気とのあいだで急に密度が変わるときに出現します。以前は、立山連峰から富山湾に流れ込んだ春の雪どけ水が空気を冷やすと考えられていましたが、近年は、雪どけ水はほとんど関与せず、気温や風の動きが最も密接に関与していると考えられています。

冬の蜃気楼(11月から3月頃に多い)は春とは逆に、実際の風景の下側に反転した虚像が見えます。これは、冬の冷たい空気が暖かい海水に接するところで暖められ、春とは逆の温度勾配になり、光の屈折の仕方も逆になるのが原因です。冬の蜃気楼は、冬の間は視界さえよければ毎日のように出現し、富山湾に限らず全国各地の海岸で見ることができます。

蜃気楼の定義と種類

蜃気楼は、大気中の温度差(=密度差)によって光が屈折を起こし、遠方の風景などが伸びたり反転した虚像が現れる現象です。

蜃気楼には大別して上位蜃気楼下位蜃気楼とがあります。上位蜃気楼は、実際の風景の上側に伸びや反転した虚像が見えるものをいいます。下位蜃気楼は逆に、実際の風景の下側に虚像が見えます。

魚津で普通「蜃気楼」といえば、上位蜃気楼をさします。下位蜃気楼と区別するため「春の(春型の)蜃気楼」と呼ぶこともあります。魚津では下位蜃気楼を「冬の(冬型の)蜃気楼」と呼んでいます。冬の蜃気楼は、一般的には浮島現象、浮景現象などと呼ばれ、原理的にはアスファルト道路や砂漠などに見られる「逃げ水」と同種の現象です。

このほか、大気の密度差が垂直方向でなく水平方向に形成される場合も想定され、その場合は像の変化も横方向になると考えられます。水平方向に虚像が現れるタイプの蜃気楼の観測例はほとんどありませんが、九州の八代海(不知火海)の“不知火(しらぬい)”がそれに相当すると考えられています。

蜃気楼を引き起こす空気層のでき方

上位蜃気楼は、下が冷たく上が暖かい空気層によって引き起こされます。通常、地表から高度が上がるにつれて気温は下がりますが、上位蜃気楼が起きる空気層ではこの関係が逆転しています。高度と気温の関係が逆転するので、このような空気層を逆転層といいます。魚津で上位蜃気楼が見られるときの逆転層の高さはおおむね10m以下、上下の温度差は1~5℃程度と考えられます。

富山湾に逆転層ができる理由は、次の2つの説が代表的です。
◆富山湾に冷たい雪解け水が流れ込み、それによって大気の下部が冷やされる
海上にある低温の空気の上に、日中の陸地で暖められた空気が流れ込む

現在は、後者の説が有力と考えられています。ただ、新たな説が生まれる可能性もあります。蜃気楼の出現のメカニズムは複雑でいろいろなパターンがあると推測され、一つの説で蜃気楼のすべてを説明することはできないかもしれません。「謎が残されている方がロマンがある」という意見もあるようです。

むかしは、天気の書籍で魚津の蜃気楼の解説は、「北アルプスの冷たい雪解け水が富山湾に流れて…」でしたが、近年は、「陸地で暖められた空気が海上に流れて…(暖気移流説)」になっています。

下位蜃気楼では、下が暖かく上が冷たい空気層によって光が屈折します。通常、暖かい空気は冷たい空気より軽く、上昇・拡散してしまうので上部より下部の方が暖かい状態では安定した層はできません。それを解く鍵は、冬の大気と海水の温度の関係にあります。

冬は気温が下がりますが、冷えにくい水の性質のため海水温は急には下がりません。そのため、冬には気温より海水温の方が高い状態になります。これによって、海面に触れる大気の下部が常に暖められることになります。暖められた空気は上昇・拡散しますが、海面付近では常に暖かい空気が作られるので外見上、下が暖かく上が冷たい空気層の形になっているのです。この暖かい空気の層は、目線より下、海面から高さ1m以内と考えられています。

この下位蜃気楼の原理は、太陽で熱せられた地面の上にもあてはまり、それが道路の逃げ水や砂漠の幻の湖を作り出します。

蜃気楼の出やすい条件(目安)

時期:3月下旬~6月上旬の晴れた日。特に5月がよい。
時間:午前11時~午後4時頃。特に昼過ぎがよい。ごく稀に日没後にも見えることがある。(新湊大橋のライトの変形など)
気温:18℃以上のとき。特に最高と最低の気温差が13℃以上がよい。
風:穏やかな北よりの風のとき。特に風速3m/s以下で、北北東~北東の風がよい。
天気:晴れの日が続き、移動性の高気圧が本州を通過し、その中心が日本の東にあるとき。等圧線の間隔が広い。
※これらに当てはまらない例外もあるが、この条件がそろえば可能性が高い。

穏やかに晴れる日が続くと、空気中のチリなどが留まりやすく、条件はよくても、視程が不良で、見てないこともある。

蜃気楼のランク

A予備知識がない人や、双眼鏡などを持たない人でも、満足できる。(肉眼ではっきり識別でき、長時間(約2時間以上)にわたり複数の方向に現れる鮮明な素晴らしい蜃気楼。)
B予備知識がない人や、双眼鏡などを持たない人でも、大半の人にわかる。(肉眼でよく識別できるが、継続時間や方向、鮮明さなど何かの要素が欠ける。)
C予備知識がない人や、双眼鏡などを持たない人の、半数ぐらいにはわかる。(肉眼で識別できるが短時間、長時間だが双眼鏡がないとわからない、方向が限定的など)
D予備知識がない人や、双眼鏡などを持たない人は、大半の人がわからない。(双眼鏡で識別できるが短時間など)
E十分な予備知識をもって双眼鏡などを使用しないと観察が困難。(双眼鏡でも識別に経験を要する)

全国の蜃気楼

琵琶湖(滋賀県)、小樽(北海道)、斜里(北海道)、苫小牧(北海道)、猪苗代湖(福島県)、大阪湾、八代海(熊本県)の不知火など

黒部方面 生地地区 生地灯台など

富山方面 火力発電所など

射水方面 富山新港 新港大橋など

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