海に向かって霧を伴う冷気の強風が川沿いを下っていく様子を「川あらし」と言います。
この「川あらし」が確認できるのは、1級河川では全国で3カ所だけです。愛媛県大洲市の「肱川(ひじかわ)」、鹿児島県薩摩川内市の「川内川(せんだいがわ)」、兵庫県豊岡市の「円山川(まるやまがわ)」、この3つを「日本三大川あらし」と呼んでいます。
山から平野への霧の移動はありますが、陸地から海に流れることは珍しいことです。肱川は風の速さ、川内川は幅の広さ、円山川は山を乗り越えてくる光景がそれぞれ特徴的です。
肱川あらし(愛媛県大洲市)
10月頃から翌年の3月頃まで、晴天の日には冷気に霧を伴った「肱川あらし」と呼ばれる強風が発生します。肱川あらしとは、晴れた日の朝、上流の大洲盆地で涵養された冷気が霧を伴って肱川沿いを一気に流れ出すという珍しい現象です。
その強風はゴォーゴォーとうねりをたてて可動橋として知られる長浜大橋を吹き抜け、大規模な時には霧は沖合い数キロに達し、風速は長浜大橋付近において10m以上が観測されます。河口近くの小高い山の上には「肱川あらし展望公園」があり、その絶景を眺めることができます。霧が町をのみ込み、うねりながら海へと扇状に広がる肱川あらしの様子は、幻想的で息をのむ美しさです。
肱川あらしは、長浜大橋において、①10m/s近くの強風、②肱川川面からのけあらし(蒸気霧)、③肱川上流からの放射霧の3つの大気現象が共存する場合
リンク: 肱川あらし予報情報サイトホームページ
川内川あらし(鹿児島県薩摩川内市)
晩秋から初春にかけて、川内川流域の内陸部では、晴れて風が弱く冷え込んだ朝に霧がよく発生します。
この霧が川内川に沿ってゆっくりと下流に流れ出します。薩摩川内市街地付近では平地が広がることから霧も広がり、さらにゆっくりとした流れとなります。しかし、市街地から下流は川の両側が次第に山に挟まれていきます。このため、霧は次第に狭い場所に集まり、流れも次第に早まります。また、河口付近は川の両側が山に挟まれたさらに狭い場所にあたることから、霧の流れが一段と速まることになります。
このことが霧を伴う嵐のような強風、いわゆる「川内川あらし」をもたらす原因と考えられます。また霧は冷たい空気を伴っていることから、暖かい海水と混じる河口付近では蒸発霧(=けあらし)が発生し、そのけあらしは河口から数キロメートルにわたって扇状に海に広がることもあります。川内川河口付近での荒々しい霧の競演とはうらはらに、直線距離で約10キロメートルしか離れていない薩摩川内市街地ではほぼ無風の穏やかな朝をむかえているという対比は、非常に興味深いものがあります。
リンク:川内川あらし公式ホームページ
円山川あらし(兵庫県豊岡市)
「円山川あらし」の見どころは、あふれ出た霧が津居山を乗り越えて滝のように海へ流れる大迫力の光景です。前日の気温が高く、夜から朝にかけてぐっと温度が下がり、すっきりと晴れた早朝に発生しやすく、10月~11月をピークに3月頃まで多く発生する。海岸から沖に約700mに位置する無人島「後ヶ島(のちがしま)」が、雲海に浮かぶ幻想的な景色を見ることができるかもしれません。
豊岡市の雲海スポット4選
①来日岳山頂 ②大師山山頂 ③有子山城跡 ④日和山海岸
リンク:円山川あらし【兵庫県豊岡市の絶景】X(旧twitter)