散居村
日本の集落の多くは屋敷が寄り集まった集村であるのに対して、広い平野の中に屋敷が散らばって建てられている形態を「散居村」といいます。砺波平野の散居村は日本最大といわれており、およそ220平方キロメートルの広い敷地の中に約7,000戸もの屋敷が建てられています。ちなみに、島根県の出雲平野、岩手県の胆沢平野、富山県の砺波平野を日本三大散居村といわれてます。
砺波平野を流れる庄川は、かつては主流と幾筋もの支流に分かれており、その流れの変遷によって長い間をかけて扇状地を造ってきました。この扇状地では地表の土層が薄く、その下は砂や小石が堆積していますが、ところどころに土がより堆積した表土の厚いところが形成されていました。その周りより少し高いところ(微高地)に家を建て、洪水の害が及びにくい周囲の土地を開墾していった経緯で、散居村の成立したようです。
扇状地の水田は「ザル田」と言われるほど、水持ちが悪く米作りに大切な水の管理が大変でしたが、庄川からの表流水が豊富であったため、水を引くことが比較的容易でした。
散居村展望台 / 展望広場
雄大な砺波平野の散居村を一望できる絶景スポットです。晴れて視程のよいときは、立山連峰や富山湾を見渡すこともできます。散居村展望台・展望広場は、富山県の「ふるさと眺望点」にも選ばれています。散居村展望広場はバリアフリーで、大型駐車場を完備しています。なお、冬期間(12月はじめ~3月下旬)は積雪などのため道路が閉鎖されています。
四季折々、美しい景色をみせてくれる散居村ですが、特に5月上旬の田植えの時期には、水が張られたきらきらと光る田んぼに夕日が差し込み、黄金色に染まる幻想的な田園風景を見ることができます。
毎年、5月上旬ごろは、地方局の中継や地方新聞の一面を飾ります!
砺波市が公開しているライブカメラをチェックするのもよいかも
舟見山自然公園(富山県入善町)から眺める夕日に輝く黒部川扇状地の水田もとても美しいです。
屋敷林(カイニョ)
砺波平野に広がる散居村は、田んぼに囲まれたそれぞれの家が「カイニョ」と呼ばれる屋敷林をめぐらせ建てられていることが特徴です。屋敷林は開拓の当初、原生林の一部を残したのが始まりと言われ、冬の季節風(吹雪)や春のフェーン現象による強風などから家を守る防風林などとして、重要な役割を担っています。また、夏の強い陽射しなどから家や人々の暮らしを守ってきたともいわれています。屋敷林には、スギ、ケヤキ、アテ、タケその他多様な樹種が植えられました。
砺波地方には「高(土地)は売ってもカイニョは売るな」という言葉があります。屋敷林に囲まれた生活を誇りにし、先祖代々からの屋敷林を守り伝えようという考えです。
家屋敷はどこも立派な構えです。大きな家の敷地は1000坪。家の四方を囲むように田畑が広がり、隣の家とは100m以上離れています。敷地には母屋、土蔵、納屋、庭、囲炉裏の灰を保管する灰納屋が基本のようで、洪水に備えた「ハトリ」という石垣も見られます。代表的な母屋の形態は「アズマダチ」と呼ばれます。
「アズマダチ」の名の由来
散居村の家屋を見て回ると、ある共通点があります。それは家の正面(正面玄関)が東を向いていることです。東を向いている理由は、砺波平野の冬の季節風は主に南西から吹きます。そのため屋敷林は南西側を特に厚く覆っており、朝日の上がる方向でもあり、入口は屋敷林の少ない東側に配置しています。家が東(アズマ)側を向いていること、武家(アズマ)風屋敷をまねたことからとも言われています。
春のフェーン現象も、概ね南~南西の暴風・強風です。